歌野晶午さんの本《前》
みなさん歌野晶午さんって知っていますか?
歌野晶午さんは推理小説家なんですが、そのトリックや話の展開がとても面白いんです
大学は東京農工大の農学部を卒業されているらしく、バリバリの理系専門から小説家になっていらっしゃって、とても驚きです
理系出身であるからか、ストーリーがとても緻密に紡ぎだされており、表現にふわっとしたものが少なく、情景がリアルに浮かび上がってきます
表現が鮮明であり、ストーリーを読み進めやすい一方で、作者の張り巡らせたトリックに引っかかりやすく、毎回感心させられ、考えさせられます
1番有名な本はこれですね
葉桜の季節に君を思うということ
この作品は、叙述トリックと呼ばれる巧妙な仕掛けが施されており、読後の驚きは半端じゃないです
初めてこの本を目にしたのは、小学校の頃でしたが、冒頭がセックスシーンからはじまるので衝撃が大きく、ちゃんと全部読んだのは高校生になってからでした
この本は日本推理作家協会賞や本格ミステリ大賞を受賞しており、叙述トリックの王道とも言える本として認められています
本の内容としては、保険金詐欺と恋の二つの大きな出来事が時間のベクトルの中で渦巻き、交錯していくような話です
あまり具体的にすると、すぐにネタバレになってしまうので是非、実際に本を読んで欲しいと思います!
次にオススメするのはこの本です
春から夏、やがて冬
この本は人生で初めて泣いた本です
なんといっても物語のメッセージ性が強すぎます
簡単なあらすじを説明します
スーパーの責任者である平田はある日、万引き犯として末永ますみを掴まえます
普段なら即警察に突き出すが、末永ますみが昭和60年生まれと聞き、気が変わってしまいます
少しネタバレすると平田の娘の交通事故が関わっているんですが、昭和60年に特別な意味が込められています
またタイトルから分かるように「春から夏、やがて冬」というように秋がないこと、1年を1月スタートの冬からと見るのではなく、最後に冬を持ってくることにかなり意味があります
この本で「やがて」やってくる「冬」は、厳冬です
人間の感情など御構い無しに凍てつくほどの寒さです
寒すぎて自分が泣いていることに気づかないほどです笑笑
クライマックスの場面では、読者に救いようのない絶望を打ち付けたうえで、本自らはそのストーリーを閉じてしまうんです
ただただ“悲しさ”だけが自分の胸に突き刺さり、「優しさってなんだっけ 」「生きてるってなんだっけ」と人間の生に関する根源的な、哲学的な問題を考えてしまいます
ネットではそのあまりにも悲痛すぎる結末に評価が二分していますが、私自身は大好きな系統です
上の二冊は誰が読んでも面白いと思うので是非御一読してみてはどうでしょうか?